「苔玉の作り方を教えてほしい」という声にお応えして
日頃より私たちのブログやYouTube、Instagram、X(旧Twitter)をご覧いただき本当にありがとうございます。
自然の恵みに育まれた山梨の地で苔と植物と向き合いながらひとつひとつ手仕事で苔玉を作っています。
さて、最近特に多くいただくのが次のようなご質問です。
「苔玉の作り方を詳しく知りたいのですが、レシピや動画はありませんか?」
「YouTubeやブログで作り方を公開しないのはなぜですか?」
このようなご期待の声に対して私たちはとても嬉しく感じています。
苔玉を「自分でも作ってみたい」と思っていただけることは作り手として光栄なことだからです。
しかし、私たちTACHIOKAYAでは、苔玉の作り方をブログ・YouTube・SNS等ではあえて公開していません。
今日はその理由を私たちの価値観や今の情報発信のあり方と照らし合わせながらできる限り誠実にお伝えしたいと思います。
なぜ苔玉の作り方を発信しないのか?TACHIOKAYAの4つの信念
苔玉は「簡単そうで繊細」な作品だから
インターネットで「苔玉 作り方」と検索すると、数多くのレシピや動画がヒットします。
確かに苔玉は見た目が可愛らしく、使う素材も一見シンプルです。土、苔、植物、糸。それだけです。
ですが、実際には、その中に驚くほど多くの“調整”と“感覚”が詰まっています。
- 植物の根の処理の仕方
- 土と水分量のバランス
- 苔の種類と巻き付ける方向
- 糸の強さや結び方
- 気候(湿度・日照)に応じた変化などなど
これらは、実際に手を動かし素材に触れて季節ごとの違いを感じながらでなければ掴めない部分です。
ブログやYouTubeなどで「この手順でやればOK」と書いてしまうと本来必要な注意点や繊細な調整を省略してしまうリスクがあるのです。
私たちはそれを無責任に発信したくありません。
苔玉を作る人が「作ったのに、すぐに枯れた」とがっかりしてしまうような体験をさせたくないという想いが根底にあります。
2. 苔玉は「育てるもの」。作るだけでは終わらない
苔玉はインテリアのように見えますが**本質的には“生きている存在”**です。
植物や苔は呼吸をしていて季節によって成長の仕方も異なります。
土が乾きやすい夏、湿気の多い梅雨、光の弱い冬。それぞれに合わせた水やり・日当たり・風通しの工夫が必要です。
TACHIOKAYAが伝えたいのは単に「作って終わり」のレシピではなく、
苔玉と暮らしていく中で得られる発見や四季折々の変化に気づく喜びです。
ブログやYouTubeでレシピを伝えるだけではその深さまでは伝えきれません。
私たちは、苔玉を「命」として迎え入れる姿勢を大切にしてほしいと思っています。
3. SNS時代における“誤情報の拡散”リスク
現代はスマホひとつで情報が広まり誰もが「発信者」になれる時代です。
それはとても素晴らしいことですし私たち自身もSNSを通してたくさんの方とつながることができました。
しかしその一方で、情報が“切り取られて”拡散されるリスクも高まっています。
たとえば「TACHIOKAYA流!苔玉の土配合」といった情報が、
本来の文脈や地域性(気候など)を無視して全国の別の場所で真似されたとします。
その結果、植物がうまく育たなかったとしたら…。
私たちの発信が誤解や失敗を生む原因になる可能性があります。
だからこそ誰にでもどこでも同じように伝わる“動画やテキスト”という手段に限界を感じているのです。
4. 「作り方より、対話を大切にしたい」――体験から始まる苔玉の世界
私たちTACHIOKAYAでは山梨県内外で苔玉づくりのワークショップを定期的に開催しています。
このワークショップでは土や苔に直接触れ作る工程の中で出てくる質問に一つひとつ丁寧に答えながら参加者の皆さんと一緒に苔玉をつくります。
この「対話」が私たちにとって何よりも大切です。
- なぜこの植物を使うのか?
- なぜこの苔を選ぶのか?
- どんな場所に飾るのがいいのか?
- お手入れで気をつけるべきことは?
ワークショップの中では参加者のライフスタイルや住環境に合わせて、個別にお話しながらアドバイスができます。
これはブログやYouTubeではどうしても難しいことです。
苔玉との出会いが「一鉢一会」であってほしい――。
だからこそTACHIOKAYAはレシピの一斉配布ではなく“手渡すように教える”ことにこだわっています。
苔玉の作り方は“リアルな体験の中”で
- 山梨の苔玉工房でのじゃらん体験プラン(完全予約制)
- 東京・神奈川を中心に定期開催している出張苔玉教室
- 季節ごとにテーマを変えた百貨店・カルチャーセンターでの苔玉ワークショップ
などを通じて実際に手を動かしながら苔玉づくりの楽しさや奥深さを体験いただけます。
苔玉の作り方を発信しないのは「信頼を大切にしたいから」
私たちは苔玉という文化や手仕事が安易に「誰でも簡単にできるもの」として消費されていくことに少しだけ危機感を抱いています。
もちろん「自分で作ってみたい!」という気持ちはとても素敵なことです。
だからこそその気持ちに丁寧に応える方法を選びたいと思っています。
- 苔玉は生きている存在
- 作ることは育てることの始まり
- SNSでは伝えきれない繊細さがある
- 直接の体験と対話こそが本質
こうした理由からTACHIOKAYAではあえて「苔玉の作り方」はブログ・YouTube・SNSでは発信しておりません。
それでも苔玉に興味をもってくださった方には心から感謝しています。
そしてもしもっと深く苔玉と向き合ってみたいと思ったらぜひ私たちの工房やワークショップに足を運んでみてください。
THANKS
記事:tmedia(tachiokayaメディア)